ヘンデルのハレルヤコーラスを知っている人は多いが、ベートーベンのハレルヤコーラスを知っている人はどのくらいいるだろうか。有名な交響曲第3番を書き上げる約1年前の1803年、ベートーベンは自分の聴覚が失われていくのを実感し始めた頃、唯一のオラトリオ、Jesus on the Mount of Olive”を書き上げた。音楽家にとって耳が聞こえないという致命的な運命を背負うのである。聖書に詳しい方は、オリーブ山のイエスと聞いて、世界の終わりの予告だとか、イエスの受難の前のゲッセマネの祈りを思い浮かべられるだろう。彼の耳が聞こえない苦悩と、イエス様の経験された苦悩、そしてイエス様の預言される人類が裁かれていく光景、それらが重ね会わされたかのように、ベートーベンのこのオラトリオも、非常に暗い音楽としてスタートする。しかし最終的に勝利をおさめるのは主キリストなのである。そして主に従うものたちなのである。だからハレルヤなのである。神様を讃えます、なのだ。この曲、まだ聞いたことのない方は、ぜひお聞きになってください。